ヴォルフガング・ティルマンス展「MOMENTS OF LIFE」(エスパス・ルイ・ヴィトン東京 2023.02.02-06.11)
5月31日に寄ったヴォルフガング・ティルマンス展では2000年から2020年にかけての写真が額装されずに展示されていました。
この人の写真を見るといつも「調和の幻想」という言葉が頭に浮かびます。静的な落ち着いている写真だという意味ではありません。
周囲の人々や政治状況を含む社会、撮影者の「自我」、制御できない写真の深淵のそれぞれとスリリングな緊張を持ちながら一種倫理的な厳しい姿勢があるようです。
ヨーロッパの論調を見てみようと思って探していたら彼をl'anticonformisteと呼んでいるサイトがありました。誰がconformisteなのでしょうか?
おそらく国家や民族の名前を振りかざす全体主義に従順な人々なのでしょう。
MoMAのHPのティルマンスの部分では2021年の曲 “Celloloop / Stronger Than This”を聞くことができます。
We got to be stronger than this
We got to be stronger than this
Rebuilding the future
Rebuilding the now
Rebuild the future
Rebuild the now
ヒューマニストの面目躍如といったところです。
生誕100年大辻清司 所蔵作品展 MOMATコレクション (2023.5.23–9.10) 東京国立近代美術館
6月2日に行った大辻清司展では展示を「実験」と「共同」、「具体」と「物質」、上原2丁目に分けて、それぞれ「実験工房」や「グラフィック集団」にかかわる写真、1956年から1970年にかけての美術をめぐる撮影、自宅とその周辺の写真を展示していました。
これは写真ではなくヴィデオで、自宅前の通りから突き当りの商店街に向けてただただ13分47間(16ミリフィルムの)カメラを動かした記録です。
この作品があることは以前聞いたことがありますが初めて見ることができました。
大辻氏は「We got to be stronger than this 」なんてこれぽっちも思っていなかったことでしょう。ものが目の前にあるということが不思議で、それが写ることがまた不思議だったののではないでしょうか。
城戸保作品 SOU(第11回JR総持寺駅アートプロジェクト)
写真は意外に言葉に支配されていると思います。たとえば、「自分は世に受け入れられていない」と思えばそのような写真が撮れますし、「人間には『徳』が必要である」と思えばそれらしい写真になるところがあります。
しかし城戸保氏の写真ではそれは当てはまらないようです。
あたかも、はたして撮影装置が本当に写るかどうか試した写真の、その一部をランダムに切り取ったようなように感じます。
タルボットの写真を思い出した、と言ったら失礼でしょうか。
茨木市のサイトによると「『SOU』は、生活の中でアートに出会い、アートを知るきっかけになることを目的に平成30(2018)年3月のJR総持寺駅開業とともに始まったもので、駅改札前の高さ2.6mの自由通路壁面に、有名・無名、地域・年齢に関わらず様々な作家の絵画や写真、現代アート、児童画などジャンルを超えた様々な作品を大型プリントにして展示しています。」と書かれています。主催は茨木市、企画・運営はOne Art Projectです。
ありがたい企画です。
参考:Wolfgang Tillmans, l'anticonformiste, radio france. 22 juin 2018、Wolfgang Tillmans, MoMA、SOU Art Project 茨木市、所蔵作品展 MOMATコレクション(2023.5.23–9.10)東京国立近代美術館